お爺さん司祭様は、お父さんに着た冒険者ギルドからのお手紙を読んでくれたんだよ。
でもよく解んなかったみたいで、頭をこてんって倒してるんだ。
「えっと、とりあえずルディーンの口座からお金を使ったという事は解りました。でも、何故そんな大金が必要だったんですか?」
「わしかルディーン君が説明すると思って、重要な事を何も書いておらぬとは。あの受付嬢、手を抜き負ったな」
そりゃそうだよね。
だってこのお手紙には、僕がイーノックカウに行ってからギルド預金に入ったお金とか、使っちゃったお金とかを書いてあっただけだったんだもん。
それにね、ちゃんと書かないとダメだからなのか、すっごく細かく書いてあるもんだからその数もすっごく多くって、途中からはお父さんもお母さんもよく解んなくなっちゃったみたいなんだよ。
でね、その最後には入ったお金の合計と出てったお金の合計が書いてあって、その下には人助けのために僕がこんだけ使ったけど許してねってちょっと難しい言い方で書いてあったんだ。
「しかし、収支を書き連ねるだけでこれだけの数になっておるからのぉ。これの内容を詳しく書こうと思ったら、羊皮紙がいくらあっても足らぬか」
「そっか。羊皮紙ってとっても高いもんね」
お爺さん司祭様は最初、ルルモアさんがめんどくさいから何に使ったのだけを書いたのかもって言ってたでしょ?
でも、こんだけいっぱいあるのを全部書いたらお手紙が本みたいになっちゃうって納得したみたいなんだ。
「まぁ、説明せねばならぬ内容は収支と違って、それほど多くは無いからのぉ。話して聞かせた方が確かに早いか」
「うん。それだったら僕にだってできるもんね」
僕はね、まだちょっとぽかんってしてるお父さんたちに、イーノックカウで何があったのかを教えてあげる事にしたんだよ。
「あのね、おとうさん。僕、ほんとはお金をいっぱい使うつもりはなかったんだよ」
「まぁ、そうだろうな」
「でも、それじゃあなんで、そんなにお金を使う事になったの?」
「それはね、ロルフさんたちに頼まれて、ベニオウの実を採りに行ったからなんだ」
僕はお父さんとお母さんに、森に行ったらニコラさんたちがゴブリンにやられてたんだよって教えてあげたんだ。
「僕、ゴブリンから見えるとこで魔法を撃ったんだよ。だってさ、僕が魔法を撃ったって解ったらきっと、それを見たゴブリンがこっちの方に走ってくるよねって思ったからなんだよ。でね、そしたらすっごい魔法でやっつけるんだって思ってたのに、何でか知らないけどゴブリンはこっちに来ないで、みんなビューって森の奥の方に逃げちゃったんだよ。だから僕、すっごい魔法を使えなくってつまんなかったんだよね」
「あー、すまん。イーノックカウでの冒険の話はまた後で聞かせてくれ」
「ええ。とっても興味がある話だったけど、それを聞いていると今日中にすべてのお話を聞き終わらないみたいだからね」
でもね、僕が一生懸命教えてあげてたのに、お父さんとお母さんはもういいよって言うんだよ。
も〜、これからがいいとこだったのに!
ここからの話は、お爺さん司祭様にバトンタッチ。
「それではまず、先ほどまでルディーン君が話しておった事を説明するかのぉ」
司祭様はそう言うと、ニコラさんたちがゴブリンにやられてて、その時にユリアナさんとアマリアさんの足首が取れちゃってた事をお父さんたちに話したんだ。
「そこでこの子がその二人の足を、魔法魔法で治してしまったのが事の始まりなのだ」
「魔法で、足をくっつけたって言うんですか?」
「うむ。しかしその事はそれほど重大ではない。わしらもいずれはできるようになると思っておったからな。問題になったのは魔法そのものではなく、その治療費なのだ」
あの時ルルモアさんは僕が魔石を使って足をくっつけちゃったもんだから、ニコラさんたちはすっごくいっぱい僕にお金を払わないとダメなんだよって言ったんだよね。
でもそんなお金、ニコラさんたちが払える訳ないからって、もうちょっとで借金奴隷ってのになりそうになったんだ。
「この子はそれを不憫に思ってな、冒険者ギルドの特例条項を使ってその者たちをルディーン君預かりにしようと考えたのだ」
「なるほど。その特例ってやつにお金が必要だったんですね?」
「いや、そうとも言えない事もないが、正確にはちと違っておってのぉ」
お爺さん司祭様はね、ニコラさんたちを助けるのには僕が居住権ってのを取ってイーノックカウにお家を買わないとダメだった事をお父さんたちに教えてくれたんだよ。
でもね、それを聞いたお父さんとお母さんはびっくり。
「ええっ!? ルディーン! お前、イーノックカウの居住権を取ったって言うのか?」
「それに、家まで買っていたなんて」
そう言いながら?区の方を見たんだよ?
でもね、それを見た僕は頭をこてんって倒したんだ。
だってさ、居住権ってのにいるお金なんて、お父さんたちだったら持ってるはずだもん。
だから僕、何でそんなにびっくりしてるの? って聞いてみたんだ。
そしたらさ、居住権てのは買える事自体がとっても凄い事なんだよって。
「イーノックカウのような都市はな、不審者が住み着く事が無いように居住権を取るための審査がかなり厳しいんだ」
「ええ。だから普通は取得する権利をもらうために、とても長い時間が必要なのよ」
イーノックカウの居住権を欲しい人はね、まず最初にお役所に欲しいって言いに行かないとダメなんだって。
でね、そしたらお役所の人がその人が悪もんじゃないか、いろんな人に聞いたりしてすっごくいっぱい調べるそうなんだよ。
だから時間がすっごくかかるし、調べるのに使ったお金も全部払わないとダメなんだよってお父さんたちが教えてくれたんだ。
「ええっ! でも僕、すぐに買えたよ」
「それはヴァルトも言っておったではないか。あやつが保証人になったからだよ」
ロルフさんは、すっごいお金持ちでしょ?
そんなロルフさんが大丈夫だよって言ったら、ほんとならすっごく調べなきゃダメなはずなのにそれだけで居住権ってのが買えちゃうんだって。
「なるほど、あの爺さんが保証してくれたから、ルディーンが居住権をすんなりと取る事ができたって訳か」
「という事はあのお爺さん、ただのお金持ちじゃなくって本当は凄く偉い人なのかも?」
「うむ。昔はあやつも、あの街でそれなりの立場についておったからのぉ。しかし、今は錬金術ギルドの受付で本を読んでおるただの隠居だと、本人は言っておるがな」
ロルフさんってお爺さん司祭様のお友達だし、錬金術ギルドのマスターをやってるバーリマンさんとも仲いいもんね。
司祭様もバーリマンさんもとても偉い人だから、このお話を聞いたお父さんたちはなるほどねぇって納得したんだ。
「付き合っている顔ぶれを見れば、その人の実力が解るというからなぁ」
「そんな人たちに可愛がってもらえるなんて、ルディーンは本当に幸せものね」
そしてそんなロルフさんが、僕と仲良くしてくれてるでしょ?
だからお父さんとお母さんはにっこり笑いながら、僕に知り合えて良かったねって言ってくれたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
お爺さん司祭様ですが、自分たちが貴族だという事をロルフさんやバーリマンさんがルディーン君に隠している事を知っています。
なので今回のようにもしかして偉い人なの? と聞かれても、はぐらかすようにしているんですよね。
ルディーン君はとても可愛がっているので、万が一貴族とばれてよそよそしい態度を取られでもしたら大変ですからね。
ですから当然ニコラさんたちは、すでにそれを知らされたうえで厳重に口止めされています。
?イーノックカウで活動しているニコラさんたちは、いつロルフさんたちが貴族だと気付いてもおかしくはないですからね。